女性の糖尿病対策とは?40代からは食習慣の改善を!

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女性の糖尿病は年齢が上がるにつれて増えていきます。女性ホルモンのバランスの崩れなども影響しており、健康的な食習慣を今のライフスタイルに加えていくことが大切です。糖尿病のリスクを減らすために今からできる食習慣とは?

糖尿病とはどんな病気?

糖尿病とは膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの不足や作用低下が原因で血糖値の上昇を抑える働き(耐糖能)が低下し、高血糖を引き起こす病気です。症状は口渇、多飲、多尿、やせ、だるさなどがあります。しかし糖尿病の恐ろしいところは重症化するまでこのような症状が起こらないということです。血糖値の高い状態が慢性的に続くことで細かい血管や神経が少しずつ損なわれていき、合併症につながる場合もあります。
糖尿病による三大合併症として網膜症、腎症、神経障害があります。

  • 網膜症

高血糖により血管が悪影響を受けて眼底出血をおこし視力障害をもたらす。失明の危険もあります。

  • 腎症

腎臓には「糸球体」が無数にあり、体の不要な老廃物を尿として排泄し、必要なものは再吸収しています。高血糖により糸球体の構造が壊れ、その結果老廃物が溜まります。腎症が進行して尿毒症になると人工透析が必要です。

  • 神経障害

しびれや痛みを伴います。こちらは血糖コントロールを行い治療を続けることが必要です。

三大合併症以外にも、高血糖が続くことで体の抵抗力が弱まり感染症にかかるリスクが高くなることや糖尿病と脂質異常症や高血圧なども抱えている場合は動脈硬化にも注意が必要です。
糖尿病は早期発見早期治療により合併症を予防できることがわかってきています。定期的な検診を受け血糖値が高めといわれたら、早めに対策を行いましょう。

<参考>
糖尿病ネットワーク『40歳代から急速に増える糖尿病 【国民健康・栄養調査2】』
https://dm-net.co.jp/calendar/2011/016459.php
e-ヘルスケアネット『糖尿病』
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-048.html
日本臨床内科医会『わかりやすい病気の話シリーズ.30 糖尿病の合併症』
https://www.japha.jp/doc/byoki/030.pdf

女性ホルモンが血糖値に影響している?

女性ホルモンのエストロゲンの分泌量は20代をピークに少しずつ低下していき、40代後半あたりから急激に減っていきます。エストロゲンは血糖値を下げるインスリンというホルモンの抵抗性と大きく関係していて、エストロゲンの分泌が低下することで血糖値が上がりやすくなるのです。エストロゲンは食欲を抑制する役割もあるため、分泌が低下することで食欲が増すということもあります。食欲が増すことで肥満や糖尿病のリスクを高めますから、食事の取り方や内容など気をつけていかなくてはいけません。

<参考>
J-STAGE『エストロゲンと糖代謝』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/51/9/51_9_829/_pdf
患者さんのための糖尿病ガイド 糖尿病情報サイト『女性の糖尿病』
https://www.dminfo.jp/lifesupport/diabetes_jyosei/

40代後半からの血糖値を意識した食べものとは?

エストロゲンの分泌が急激に低下する40代後半~50代は、エストロゲンに似た作用を持つ大豆イソフラボンを含む食品を摂るのがおすすめです。大豆イソフラボンは大豆製品に多く含まれ豆腐、きなこ、納豆、味噌、豆乳などを毎日摂るようにしましょう。大豆は植物性のため食物繊維も一緒に摂ることができます。食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにする働きがあるため食事に取り入れることが望ましい栄養素です。食物繊維は押し麦などの穀類、野菜、きのこ、海藻、果物などからも摂ることができます。

血糖値の上がりやすさがわかるGI(グリセミックインデックス)値というものがあります。GI値とは血糖値を上げやすい食べ物か、上げにくい食べ物かを見分けるための数値になります。白米や小麦など精製度の高いものはGI値が高くなり、精製度が低い玄米や全粒小麦、きび、あわ、ひえ、そばなどはGI値が低くなります。GI値は単品のみでの計測された値になるため、食物繊維を含む食材などと組み合わせることを考えると、GI値はあくまで目安程度にしておくといいでしょう。

食事を摂る際には主食+主菜+副菜を組み合わせてバランスを意識します。食べる順番にも気をつけ大豆製品や野菜など食物繊維が豊富なものを先に食べることで、ごはんなどの糖質による血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。

朝食を抜くと次の食事後(昼食後)の血糖値が高くなることがわかっています。一見朝食を抜いた方がよさそうですが、次の食事の際に膵臓に負担がかかります。ですから朝ごはんは抜かずに食べるようにしましょう。
朝食の準備をするのが面倒な場合は買い置きや作り置きがおすすめです。ごはん+納豆+前日に作っておいた野菜たっぷりの味噌汁は栄養バランスもバッチリです。大豆イソフラボンや食物繊維がしっかり摂れる理想的な朝ごはんになります。

また食事の際はしっかりよく噛むことでも血糖値の上昇が抑えられます。1日3食よく噛んで食べる習慣をつけることは糖尿病対策になります。

<参考>
厚生労働省『大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A』
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0202-1a.html#q02
中嶋洋子 監修『改訂新版 栄養の教科書』新星出版 2016年6月5日発行
佐々木敏 監修『佐々木敏のデータ栄養学のすすめ』女子栄養大学出版部」 2018年8月5日 初版第三発行

お豆でサラダ・オニオンフレーバー

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茹で大豆でたっぷり大豆イソフラボンが補えるレシピです。

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大豆テンペのカレーサモサ

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テンペは大豆を発酵させて食品。大豆イソフラボンも摂れます。

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無理なダイエットがNGな理由

40歳を過ぎると筋肉量も低下しはじめます。筋肉はブドウ糖をグリコーゲンという形で貯蔵する最大の臓器であるため、痩せて筋肉量が減ってしまうと食後にブドウ糖を筋肉に取り込めず、高血糖を生じやすくなります。ですからバランスの取れた食事や適度な運動などで筋肉の維持に努めなくてはいけません。

40代後半から太りやすく、痩せにくい...という声をよく耳にします。エストロゲンの分泌量と関係があり、エストロゲンは食欲を抑制して、エネルギーの消費量の上昇や体脂肪量の低下などにも作用しているからです。エストロゲンの分泌量が低下する40代後半から特に太りやすくなるのは身体の変化であり仕方のないことなのです。
しかし暴飲暴食や甘いものを習慣的に食べているなど今までと同じ食生活を続けることは体重増加を招きやすい環境を自分で作っていることになります。「太ったから痩せればいいや。」と急に無理な食事制限による減量を行うと筋肉が落ちる可能性があるためおすすめできません。適正な体重や筋肉維持ができるように今の食生活を見直すことをおすすめします。

菓子類やジュース類から糖質を取るのではなくごはんなどの穀類から取るようにします。間食で小腹が空いたら、菓子類を食べるのではなく、鮭や昆布などの入ったおにぎりが理想的です。その他間食は食事で取り入れにくい果物やナッツ類、乳製品などもおすすめです。

健康的に歳を重ねるためにも、血糖値を意識した食習慣にすると生活習慣病対策にも役立ちます。

<参考>
患者さんのための糖尿病ガイド 糖尿病情報サイト『女性の糖尿病』https://www.dminfo.jp/lifesupport/diabetes_jyosei/
糖尿病ネットワーク『やせていても糖尿病に? 筋肉が少なく脂肪がたまると高血糖に』https://dm-net.co.jp/calendar/2018/028068.php
J-STAGE『エストロゲンと糖代謝』https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/51/9/51_9_829/_pdf

野菜たっぷり鮭のチャンチャン焼き

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野菜がたっぷりで食物繊維も補え、満足感も高まります。

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きのこと長ねぎのおろしそば

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GI値の低いそばと食物繊維が豊富なきのこレシピ。

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当コラムは、ご利用者の健康状態や医療の必要性に言及したものではありません。また、当社は、情報自身について、その内容の真偽、適格性、正確性について保証や責任を負うものではありません。

管理栄養士金子 あきこ

給食コンサルタント/節約美容料理®研究家

東京家政大学短期大学部栄養科卒業
10年以上給食委託会社にて特別養護老人ホームやデイサービス、幼稚園などにて調理や献立作成を行う。赤字を黒字転換する献立作成を得意とする。2015年に独立し給食施設のコンサル業務・レシピ開発・コラム執筆・セミナー講師・メディア出演など活躍中。著書『おなかぺったんこ腸筋レシピ』リピックブック など。

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